実践例 Zoomを使った国際理解教育プログラムや遠隔授業の試み

ジャンル 教育
主宰者 森田明彦(尚絅学院大学教授)
参考URL Go Global
https://www.facebook.com/Go-Global-1825324467725041/
Special Panel on the future of nuclear energy in Sendai,27 November 2017
https://www.facebook.com/panelnuclearenergyBOSAIFORUM2017/

私は2013年頃から研究者としての主な活動のステージを海外とすることを決心し、そのために通信環境がそれほど良くない地域でも安定的にライブ会議や遠隔授業ができるオンライン会議システムを探し始めていました。

また、同じ時期に情報通信機器やアプリの開発速度が突然加速化しそれに伴って激烈な価格破壊現象が起き始めていることを体験し、世界で何かが始まっていると感じて、この現象が何なのか突き止めたいと強烈に思うようになりました。

この思いを実現すべく2016年4月に米国ニューヨークのコロンビア大学で1年間の在外研究生活を始めた直後、大学書店でアメリカンオンラインの創始者であるスティーブ・ケースが書いた『第3の波(The Third Wave)』という本が山積みで売られているのを見つけたのです。

ケースは1985年から1999年をインターネットが一般公開され普及した時代(「第1の波」)、2000年から2015年までをアプリ経済とモバイル革命の時代(「第2の波」)、そして2016年以降をインターネットによるユビキタスな繋がりがリアルの主要な産業分野を変革し始める時代(「第3の波」)と捉えて、とりわけ医療産業と教育産業で大きな変革が起きると予測していました。
この本に触発されて、世界最新のオンライン教育プログラムを探し始めたところ、日本人の名前がヒットしました。
それが田原さんでした。田原さんを通じてZoomの存在を知りました。

同じ頃自分が所属しているコロンビア大学人権研究所で、ミャンマーに住むミャンマーの女性たちにオンライン人権教育プログラムを提供しているプロジェクト責任者と話す機会がありました。当初別のオンライン会議システムで繋ごうとしたところ、このプロジェクト責任者の自宅の通信環境があまりよくなく繋がりませんでした。

そこでZoomを使うことを提案したところ、このプロジェクト責任者はZoom初体験であったにもかからずまったく支障なくZoomにアクセスし、私とビデオ通話をすることができたのです。
このときZoomの通信容量が格段に小さく、通信状態がきわめて安定していることを実感しました。

このプロジェクト責任者はミャンマーのプロジェクトでもZoomを使ってみたいと話されました。
世界最高学府であるコロンビア大学で世界最先端の技術者の支援を受けているプロジェクトのリーダーがまだ知らなかった技術を日本から来た自分が紹介したというこの体験は、私にとって大きな転機になりました。
世界最新のオンライン会議システムZoomを使って、世界で誰も挑戦したことのない試みに取り組んでいる田原さんの存在は自分に「日本人でも世界最先端の試みができるのだ」という自信と意欲を与えてくれたのでした。

それから、日本にいる私のゼミ生とZoomを使ってオンラインゼミを始めました。
他のオンライン会議システムではあまり積極的ではなかった学生が、Zoomの共有機能やホワイトボード機能に興奮して勝手に遊び始めるのを見て、このシステムは使えるとさらに確信しました。

また、自分の研究課題の一つである国際理解教育プログラムの開発に本格的に取り組むべく、やはり田原さんが主宰されたオンラインOST(注)に参加し、そこで全国各地の同じ問題意識を持つ方たちとプロジェクトチームを立ち上げることになりました。やがてこのプロジェクトの構想を翌年(2017年)2月にサンフランシスコで開催される国際カンファレンスで報告をしようという壮大な話へと発展し、報告者を選ぶための世界公開投票に挑戦することになりました。

「ここで盛大な選挙運動をすると、日本に帰ったあと目立ちたがり屋と批判されるかも」
と当初消極的だった私を後押ししてくださったのも田原さんでした。

「森田さんをサンフランシスコに送り出しましょう」とオンラインで声掛けをしてくださり、私も本気になって選挙活動(?)に励んだ結果、英語のネイティブスピーカーでもないにもかかわらず第一次予選を通過することができたのです。

2016年11月には山形県米沢市の九里学園高校とサンフランシスコ、長崎、静岡、東京等をZoomで繋いでハイブリッドワールドカフェの試みに挑戦しました。

そして、2017年4月に帰国したあと、Zoomを使って新入生を対象とした本格的なハイブリッド授業を始めました。
田原さんをはじめとする外部講師の方にZoomを使ったオンライン特別講義をしていただき、台湾の弘光科技大学の学生とオンライン合同授業も行いました。

さらに、長年多言語習得活動に取り組んでいる言語交流研究所(ヒッポファミリークラブ)の全面的協力を得て、同本部と宮城県の尚絅学院大学をZoomで繋ぎ、本部のスタッフやインターンを交えたハイブリッド多言語習得授業(全15回)にも挑戦しました。
2017年11月27日には仙台で開催される世界防災防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台2017において、原子力エネルギー政策の将来についてZoomを使ったハイブリッド公開パネルの開催を計画しています。

最近の科学技術の発展は過酷なまでに急速で、ビッグデータ、AI、ロボティックス、ブロックチェーンなどの新たな技術がリアルの産業構造を大きく変えつつあります。
なかでも教育界はもっとも急速に劇的に変容しつつあります。

世界の一流大学の単位取得可能な授業をオンラインで受講することは技術的にはすでに可能です。他にも優れたオンライン教育プログラムが様々なレベルでほぼ無償で提供されるようになるなか、ビッグデータとAIの活用で一人ひとりの生徒・学生の志向と進度に合わせた知識習得が可能となりつつあります。

その結果、教師の役割は知識の伝達から自発的学習、協働学習を促進するファシリテーション、自発的コミュニティ作りへと急速に移り変わりつつあります。ビッグデータに基づくより個別化された職業選択・企業選択が技術的に可能となった結果、学歴による事前スクリーニングを伴った画一的な就職活動は間もなく過去の遺物となるでしょう。
大学教育の役割はもともとオリジナルな研究・調査を通じて新たな知への挑戦の醍醐味を学生たちに体験させることです。国境を越えたハイブリッドな協働を可能とする画期的なオンライン会議システムとして、Zoomは高等教育に新たな可能性を拓くものと私は考えています。

(注)OST(Open Space Technology)は、1985年にハリソン・オーエン氏によって提唱された、会議参加者の当事者意識と自己組織化能力を最大限に引き出すことによって、参加者が納得できる合意を形成できる話し合いの手法・考え方のこと。




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