実践例 精神科の薬について語り合う対話の場

ジャンル 医療
主宰者 月崎時央(医療ジャーナリスト メンタルサバイバーチャンネル 世話人)
参考URL FBメンタルサバイバーチャンネル https://www.facebook.com/mentalsurvivorchannel/

「♪ピンポーン」

毎週月曜日の夜8時オンライン参加者が入ってきた合図の音が、次々に私の仕事場に響きます。画面の中にあるのはメンタル回復者が集う『減薬ダイアローグカフェ オンライン フラット』の会議室です。会議室のアドレスは参加者のみなさんが元気になるように、ミナヨクナロー(374‐976‐0000)に固定してあります。

「あ、Aさんこんばんは! 調子はどうですか?」と私。
「いや? 昨日眠れなくて」
「♪ピンポーン」
「初めてで、緊張しています。最近減薬始めました。よろしくお願いしまーす」と初参加の方。
「♪ピンポーン」

あ、精神科医のB先生は仕事が終わったところみたい、白衣姿で参加してくれています。今日は鍼灸師のC先生も来るのかな?

画面にはマグカップやビール片手の人、お弁当を食べながらの人、体調不良で寝ていたらしく寝癖で頭ボサボサの人も。「顔出しは恥ずかしい」と黒画面にニックネーム、チャットのみで参加の人もいます。メンタルの病の体験者の他に、医師や看護師、薬剤師、ソー
シャルワーカや鍼灸師さんなど支援側の人々もちらほら。毎回全国各地から6〜10名が集まってきます。

参加者には名前を「呼ばれたい名前」に書き変えて、地域と自分の状況を書いてもらいます。例えば(ハナちゃん 世田谷区 減薬中)(タロウさん 愛知県 精神科医)など。背景がある程度わかる一方で、日頃の肩書きや立場にこだわらずフラットな関係で対話ができる場を作ること、そしてファシリテーターである私はできるだけ目立たず互いの対話が促進するよう意識しています。

対話のテーマは、当日参加者の話から決まる週もあれば、事前に用意しFacebookで告知する週もあります。例えば『精神科医に薬のことをどう相談するのか』、『メンタルの回復に役立つ食生活は?』『入院と身体拘束の経験』など様々です。時にはその日の参加者が深刻な体調不良や困りごとを訴える場合もあります。医療関係者が常に参加しているわけではないので、そんな時は参加者が話を聞き、互いの経験を共有しみんなでアドバイスします。

ここ数年でメンタルヘルスの世界では、その回復には同じ体験をした仲間同士のサポートや対話が大変有効であることが実証されつつあります。私たちのオンラインでも具体的な回答が得られなくても、体験者が互いの存在を承認し、思いを分かち合うことで安心・安全が担保された温かな場が育ってきていると感じます。

私は2年前から、東京浅草で『減薬ダイアローグカフェ』というリアルのワークショップを定期的に行っていました。田原さんと出会い、活動の中心をZoomを利用した『減薬ダイアローグカフェ オンライン フラット』に切り替えて1年あまりが経とうしています。

リアルのワークショップは参加費500円で行っていましたが、実は会場確保に苦慮していました。また患者さんにとっては会場までの移動も大変で体力が続かない場合があること、病のため経済的な困難を抱えた人にとって交通費が負担になること、本当は楽しみにしている二次会にも経済的な理由で参加を躊躇する人がいることなどが課題でした。

オンラインでの展開の一番のメリットはこの経済問題を一気に魔法のように解決してくれたことです。その結果、毎週、本当に気軽に、無料で、自宅で全国にいる仲間がリラックスして自由なテーマでコミュニケーションができるようになったのです。今年(2017年)7月からは、メンタルヘルス回復者ためのリカバリープログラム『オンラインWRAP 元気回復行動プラン』というプログラムもスタートしました。

私はオンラインを使った対話は、社会的な弱者と考えられている人々のエンパワーメント(能力開花)ツールとして無限の可能性を持っていると感じています。障害を持つ方、引きこもり経験者や、コミュニケーションが苦手な方、子どもたち、お年寄りなど。従来は支援される側だと考えられてきた人々が仲間と対話をすることで自発的な活動チャンスも得ることができるからです。オンラインコミュニティという場での対話は今後より豊かな多様性に満ちた社会を作る原動力になるのではないかと期待しています。




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